2014年2月21日更新 著者 出川 雄一(障がい者就労研究家)              このエントリーをはてなブックマークに追加  




聞こえないふり!障害者手帳は発行される?

更新日現在、現代のベートーベンとされていた佐村河内氏の聴力に、疑惑の目が向けられています。聴覚障害に陥った時、果たしてどのような審査を経て、障害者手帳が発行されるのでしょうか?


まずは、聴覚障害に陥った時、何級の手帳をもらえるかです。


身体障害者手帳は一級から六級までの等級が存在し、数が小さくなるほど障害度が重い状態となっています。(ちなみに、手足が不自由な方は7級も存在しますが、障がい者手帳は発行されません)


このうち、聴覚障がい者の方は、「二級」・「三級」・「四級」・「六級」の手帳を交付されることになっています。 一級がない理由ですが、他の障害(視覚障害・精神障害・知的障害)と比較した時、その障害度などが考慮されているようです。


ちなみに聾唖者のケースですと、例えば聴覚障害が二級で、言語機能障害が三級だった場合、合算して障がい者手帳一級が交付される事になっています。



佐村河内氏の場合、障がい者手帳二級が交付されていました。


そして、音が聞こえるかどうか?ですが、これはデジベル(dB)という、音の強さ(レベル)を表す単位が存在し、これによって等級が決められています。つまり、耳が聞こえる人に対して、どの程度聞こえないのか?を判断する数値として、デジベルが使われているのです。


dB 程度 おおよその目安
0dB - -
10dB - -
20dB 時計の針音 -
30dB 静かな会話 -
40dB - -
50dB 普通の会話 -
60dB - -
70dB 大声 障害者手帳6級
80dB 地下鉄車内 障害者手帳4級
90dB 怒鳴り声 障害者手帳3級
100dB ガード下の電車 障害者手帳2級
110dB - -
120dB - -
130dB 飛行機のエンジン -
細かな手帳交付の条件は改めて記載致します。


Aさんはどのぐらい耳が聞こえるのか?
これは、オージオメータと呼ばれる機器が存在し、これに頼る事で数値を計測する事になっています。防音の部屋でヘッドホンを付けて、「ピ~~♪」という音が聞こえたらボタンを押す! そうです。あれです。


これを純音聴力検査といい、耳に当てて検査をする手法と、頭の骨に直接振動を与えて音を聞く手法があります。


① 耳に振動をあてて調べる方法



② 骨に振動を与えて調べる方法
画像はST-navi言語聴覚士リハビリ情報サイトから引用いたしました。


①のように、耳に振動を与えても聞こえないものの、②の頭の骨に振動を与えて聞こえるケース。 この場合、外耳・中耳(耳の外の部分)による障害が考えられます。(検査を数値化しグラフにしたのがオージオグラムというものです)


また、語音明瞭度検査というのもあり、「あ」とか「い」とか、どの程度聞こえているのかを調べる検査も存在します。


つまり、今の制度では本人が自由自在にボタンを押す事が可能となっており、本人とお医者さんがコミュニケーションをとる中で、どの程度の聴力障害があるのか?を調べあげる検査となっています。 性善説の制度となっているのですね。


実際、2007年に起きた身体障害者手帳集団不正取得事件では、一人の医師が812人に対し、二級の認定を下していたのが問題になっていました。問題が発覚すると、726人の手帳取得者が、「耳が良くなった」などを理由に、手帳を返還する騒動が起きています。


この医師、「診断に全く偽りはない」「患者が聞こえないふりをした」 などといっていたようで、交付の基準そのものに問題がある事がわかります。


そして、コミュニケーションが取れない赤ちゃんや、認知症のお年寄りに対して実施しているのが脳波による診断です。 聴力障害の赤ちゃんを見抜くのは非常に困難ですので、音の刺激を与える事により、脳幹部から発生する特殊な脳波をキャッチする事で、聴覚障害があるかどうかを判断しています。


これを、聴性脳幹反応検査(ABR)といいます。


Aさんは本当に聴覚障害があるのだろうか?
お医者さんが怪しいと判断した人に対しては、このABRによる再検査を受ける事もあるようです。



聴覚障害の認定について49分30秒から(国会中継)


上記は2014年2月18日の予算委員会の動画です。
民主党の古川元久氏が聴覚障害の認定について田村厚生大臣に質問をしています。 田村大臣も、この認定制度の問題を認識しているようで、今回の事実関係をしっかり調査した上で、検討したい」と言っておりました。


この検討とは、聴性脳幹反応検査(ABR)を含めて検討する。という意味だと思われます。


本当に障害がある方に対する疑いの目!
この部分を改善するためにも、本当に障害がある方にのみ障がい者手帳を交付する。そんな、あたりまえの仕組み作りが大切なのだと思いました。 出川 雄一 (福祉ジャーナリスト / 障がい者就労研究家)


    


福祉情報158へ 障害者手帳!デメリットはありますか?











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